「家族葬〇万円〜」の広告と、実際の請求額はなぜ違う?措置命令の事例から学ぶ総額の確かめ方
「家族葬10万円〜」のような広告を見て依頼したのに、請求は何倍にもなった。そんな相談が増えています。消費者庁の措置命令の事例と国民生活センターの相談事例をもとに、広告の価格に入っていないことが多い費用と、総額を確かめる質問をまとめました。
目次
「家族葬なら費用をおさえられる」と考える人は多いと思います。広告でも「家族葬〇万円〜」という表示をよく見かけます。
ところが、その金額で葬儀を終えられるとは限りません。この記事では、実際に行政が問題にした事例をもとに、広告の価格と請求額がずれる理由と、総額を確かめる方法を整理します。
消費者庁が措置命令を出した2つの事例
景品表示法では、価格などの条件を実際よりも著しく有利に見せる表示を「有利誤認」として禁止しています。葬儀の価格表示について、消費者庁がこの法律にもとづく措置命令を出した例を2つ紹介します。
株式会社金宝堂「小さな森の家」(2026年9月18日)
- 対象は、「小さな森の家」という名前で提供する、貸切ホールを使う家族葬のサービスです。
- 2025年3月から5月にかけて放送したテレビCMで、「お得なプランがこの価格から」という音声とともに「家族葬 10.45万円〜(税込)」と表示していました。
- 消費者庁は、これが最低料金10万4,500円で提供されるかのような表示だったと認定しました。
- 実際には、このサービスを受けるには、わずかな場合を除き30万8,000円以上の費用が必要でした。
出典:消費者庁 措置命令(2026年9月18日)
株式会社那覇直葬センター(2024年5月30日)
- 対象は「直葬プラン」「火葬プラン」と呼ぶ、式を行わず火葬だけをするサービスです。
- 新聞の折り込みチラシで、仏具や供花のある部屋に安置された棺の写真とともに「火葬プラン 77,000円(税込)」などと表示していました。
- 実際には、個室でご遺体と面会する場合は個室の料金が追加でかかり、その部屋に供花や仏具を置く場合はさらにその料金がかかりました。
- 自社サイトでは「通常価格 180,000円」と並べて表示していましたが、その「通常価格」で提供した実績はありませんでした。
どちらの命令でも、消費者庁は事業者に対し、違反だったことを一般の消費者に知らせること、再発防止策をとること、同じような表示をしないことを命じています。
相談の半分以上が「料金が高い」|国民生活センターの事例
国民生活センターは2026年6月、「依然として多い葬儀サービスの料金トラブル-『家族葬だから安い』と思っていませんか?-」という注意喚起を出しました。
全国の消費生活センターなどに寄せられた葬儀サービスの相談は、2025年度で917件(2026年3月31日までの登録分)。そのうち、想定より高くて納得できないという「高価格・料金」の相談の割合は、2019年度の33.2%から、2025年度は**52.6%**に増えています。
紹介されている事例から、広告と請求額のずれがわかるものを要約します。
- 「家族葬50万円」の表示を見て依頼:葬儀社でネットに出ていた低価格のプランを申し出ると、「無宗教の方向けのプラン」だと言われ、読経をしてほしかったため140万円のプランを承諾。見積書にはプラン名と「一式」としか書かれておらず、会食などの追加費用が加わって、総額は200万円を超えた。
- 「一日葬は約30万円」のチラシを見て依頼:病院から引き取りをせかされて依頼したところ、翌日に80万円以上の見積もりが出て、約80万円で契約。請求書の明細には、マイクの使用料、仏具の搬入搬出代、仏衣を着せるための費用などが入っていた。チラシには、仏具や仏衣は料金に含まれると書かれていた。
- 広告の「50万円のプラン」で搬送を依頼:翌日の打ち合わせで120万円のプランを提案され、キャンセルするなら搬送費用として20万円と言われた。結局、オプションを外して約120万円で契約した。
国民生活センターは、「家族葬」や「一日葬」は葬儀社によって扱う範囲が違い、消費者のイメージと食い違うことがトラブルの一因と思われる、と指摘しています。
実際の費用はどのくらい?
では、実際の葬儀費用はどのくらいなのでしょうか。民間の調査ですが、鎌倉新書が2026年に公表した「第7回お葬式に関する全国調査」(喪主などの経験者2,000人)の数字を見てみます。
| 葬儀の形式 | 費用 | 選んだ人の割合 |
|---|---|---|
| 一般葬 | 122.01万円 | 30.2% |
| 家族葬 | 96.39万円 | 47.0% |
| 一日葬 | 74.43万円 | 11.9% |
| 直葬・火葬式 | 49.56万円 | 10.8% |
家族葬を選んだ人は約半数で、最も多い形式です。そしてその費用は、広告でよく見る「10万円台〜」「30万円〜」とはかなり離れています。
広告の価格に入っていないことが多いもの
広告の「〇万円〜」は、いちばん安いプランの、さらに基本部分だけの価格であることがあります。どこまで含むかは葬儀社ごとに違うので、以下は一般的に別料金になりやすいものとして読んでください。
2005年の公正取引委員会の調査でも、プランに含まれないサービスはプラン料金とは別料金になること、会葬者の人数が想定を上回れば追加料金が必要になることが指摘されています。
場所と日数で変わるもの
- 火葬料:火葬場の使用料。公営か民営か、故人の住所が地元かどうかで変わることがあります。
- 式場使用料:自社ホールか、公営斎場などを借りるかで変わります。
- 安置料:火葬までの間、ご遺体を安置施設に置く費用。日数分かかることがあります。
- ドライアイス:プランに含まれるのは決まった日数分だけで、火葬場が混んで日程が延びると追加になることがあります。
- 搬送:プランに含まれる距離や回数を超えると追加になります。深夜や早朝の料金が別のこともあります。
人数で変わるもの
- 飲食(通夜ぶるまい・精進落としなど)
- 返礼品(会葬御礼・香典返し)
- 会葬礼状など、人数分そろえるもの
葬儀社に払わないもの
- 宗教者へのお礼(お布施・戒名料など)。葬儀社の見積書には入っていないことが多い費用です。
那覇の事例の「個室での面会」「供花・仏具」、国民生活センターの事例の「宗教に合わせたプラン」「会食」のように、家族が「ふつうは含まれているだろう」と思うものが別料金になっていることが、ずれの原因になりやすいのです。
総額を確かめる質問リスト
広告の金額ではなく、自分たちの場合の総額を聞くことが大切です。電話でも、次の質問をそのまま使えます。
人数と日程、宗教者を呼ぶかどうかの3つを先に伝えると、総額に近い金額を出してもらいやすくなります。
国民生活センターの事例のように、見積書が「〇〇プラン 一式」だけでは、何が含まれているのかわかりません。明細のある見積書をもらうことが基本です。見積書のどこを見ればいいかは「葬儀の見積書の読み方」で詳しく説明しています。
「家族葬だから安い」とは限らない
家族葬は、参列者を家族や親しい人にしぼる葬儀です。人数が少なければ、飲食や返礼品の費用はおさえられます。ただ、祭壇や式場、火葬、安置など、人数にかかわらずかかる費用は残ります。
国民生活センターが注意喚起のタイトルで「『家族葬だから安い』と思っていませんか?」と問いかけているのは、このためです。
広告の金額にひかれて急いで決めると、あとで総額の違いに驚くことになりかねません。とくに病院で亡くなった直後は、時間に追われて比べられないまま決まりがちです。その構造については「病院と葬儀社の『提携』はどういう仕組み?」で整理しています。
いちばん確実なのは、元気なうちに1社だけでも総額の見積もりを取っておくことです。やり方は「入院中のうちに葬儀社を1社だけ決めておく方法」で紹介しています。
参考資料・出典