病院で「葬儀社はお決まりですか?」と聞かれたら|その場で言える一言と、最初の1時間でやること
病院で家族が亡くなった直後、葬儀社を決めていないと、その場で紹介された業者に葬儀まで任せてしまいがちです。搬送だけを頼んで時間をつくる言い方と、サインの前に確認することをまとめました。
なぜ病院で葬儀社が決まってしまうのか
いま日本では、亡くなる人のおよそ3人に2人が病院で最期を迎えます。病院で亡くなると、ご遺体はまず霊安室に移され、そこから自宅や安置施設へ運ぶ必要があります。
この「運ぶ」段階で、病院と付き合いのある業者や、病院から紹介された業者が関わることがあります。家族はその業者と初めて顔を合わせ、そのまま「お葬式もこちらで進めましょうか」と提案されます。
家族を亡くした直後は、冷静に比べる余裕がありません。データもそれを示しています。
- 2026年の鎌倉新書の調査では、喪主などを務めた人の63.8%が事前の準備をしていませんでした。自分で葬儀社を決めた人のうち87.1%が、見積もりを1社しか取らなかったか、まったく取っていません。
- 2005年の公正取引委員会の調査では、亡くなってから葬儀社を決めた人の95.6%が、他の業者と比較していませんでした。同じ調査では、一部の病院指定業者が「遺族を霊安室に引き留め、説得するなどして」自社との契約を促す事例があったとして、独占禁止法上問題となるおそれを指摘しています。
もちろん、病院で紹介される業者がみな悪いわけではありません。誠実な業者もたくさんいます。問題は、比べる機会がないまま決まってしまうことです。比べなければ、料金が高いのか妥当なのか判断できません。
よくある流れ
- 病院で死亡
- 霊安室へ
- 紹介された業者に
搬送を頼む - その場で葬儀も契約
比べないまま決まる
おすすめの流れ
- 病院で死亡
- 霊安室へ
- 「搬送だけ」
頼む - 自宅や安置施設に
安置 - 2〜3社の見積もりを
比べて契約
火葬は死後24時間以降。比べる時間はある
その場で言える一言
紹介された業者に搬送を頼むこと自体は、まったく問題ありません。大事なのは、搬送と葬儀を切り分けて伝えることです。
もし「このまま葬儀もお任せいただくと搬送費がお得です」「今日中に決めていただかないと」と言われても、答えは同じでかまいません。「家族で相談します」は、角の立たない断り方です。
サインの前に、この3つだけは確認する
国民生活センターや自治体の消費生活センターには、病院から急いで搬送を求められ、内容をよく確認しないまま契約して高額になったという相談が寄せられています。東京都の注意情報には、見積もりをよく確認せずに署名した結果、160万円を請求された事例があります。
書類を出されたら、次の3つを確認してください。
- 何の書類か:搬送だけの依頼書か、葬儀一式の申込書か
- 搬送の料金:距離・時間帯(深夜料金)・ドライアイス代を含めていくらか
- 葬儀を頼まなかった場合の扱い:搬送費以外に何か請求されるか
国民生活センターが2026年に公表した事例には、「依頼しなければ搬送費はいただかない」という広告を見て頼んだのに、翌日に高いプランを勧められ、キャンセルするなら搬送費用として20万円と言われたケースがあります。口約束ではなく、料金は書面やメモで残してもらうのが安全です。
最初の1時間でやること
- 死亡診断書を受け取る(死亡届と一体の用紙。コピーを数枚とっておくと後で役立ちます)
- 安置場所を決める(自宅か、葬儀社や民間の安置施設か)
- 搬送を頼む(紹介された業者でも、自分で探した葬儀社でもよい。「搬送だけ」と伝える)
- 家族・親族に連絡する(葬儀の内容を決めるのは、そのあとで大丈夫です)
順番の詳細は「病院で家族が亡くなったら:最初の数時間の手順」にまとめています。スマホでそのまま見られるので、ブックマークしておいてください。
葬儀社を比べる時間はある
「すぐに決めなければ」と感じるのは自然なことです。けれど、法律(墓地、埋葬等に関する法律 第3条)で、火葬は原則として亡くなってから24時間を過ぎないとできません。実際には火葬場の予約状況もあり、葬儀は早くても翌日以降になることがほとんどです。
ご遺体を安置したあとで、2〜3社に電話して見積もりを聞くことは十分にできます。比べるときに聞くことは、見積書の読み方の記事にまとめています。
いちばんの対策は、元気なうちに1社だけ調べておくこと
病院で流されないための、いちばん確実な方法は「候補を1社だけでも持っておく」ことです。候補があれば「決めているところがあるので」と言えます。
縁起でもないと感じるかもしれませんが、資料請求や事前相談は無料のところがほとんどで、申し込みを強制されることもありません。やり方は「入院中のうちに葬儀社を1社だけ決めておく方法」で詳しく紹介しています。
参考資料・出典