病院の霊安室には何時間いられる?「早めに移動を」と言われたときの選択肢
病院の霊安室は、ご遺体を一時的に安置する場所です。いられる時間は病院によって違い、数時間で移動を求められることが多くあります。霊安室と安置室の違い、移動先の選び方、夜中に亡くなったときの動き方をまとめました。
目次
霊安室にいられる時間は、病院によって違う
いま日本では、亡くなる人のおよそ3人に2人が病院で最期を迎えます(厚生労働省の人口動態統計、2025年は64.1%)。病院で亡くなると、ご遺体はまず病院の霊安室に移されます。
霊安室にいられる時間について、法律や国の決まりはありません。病院ごとの運用です。
病院の霊安室は、ご遺体をしばらく預かるための部屋で、葬儀まで安置しておく場所ではありません。部屋の数も限られています。そのため、数時間のうちに「お迎えの手配をお願いします」と声をかけられることが多いようです。夜間の扱いも病院によって違います。
時間を先に聞いておけば、「急がなきゃ」という焦りがぐっと減ります。あと何時間あるかがわかれば、その間に家族と相談したり、葬儀社に電話したりできます。
「霊安室」と「安置室」の違い
似た言葉ですが、置かれている場所と役割が違います。
| 霊安室(病院) | 安置室(葬儀社・民間施設など) | |
|---|---|---|
| どこにある | 病院の中 | 葬儀社の会館、民間の安置施設、公営斎場など |
| 役割 | 亡くなった直後の一時的な安置 | 葬儀・火葬の日まで預かる |
| いられる時間 | 短時間(病院による) | 葬儀・火葬の日まで(施設による) |
| 費用 | 病院による | 1日ごとに安置料がかかることが多い |
葬儀社によっては、自社の安置室を「霊安室」と呼ぶこともあります。言葉にこだわらず、「病院の部屋か、そのあと預ける場所か」で考えるとわかりやすくなります。
移動先は3つ。それぞれの注意点
- 1自宅家族がそばにいられる。布団を敷く部屋と、搬入経路の確認が必要主な費用:搬送料・ドライアイス
- 2葬儀社の安置室家に帰れないときに多い。面会の時間は施設による主な費用:搬送料・安置料(日数分)
- 3民間施設・公営斎場葬儀社を決める前に預けられる施設もある。条件は地域で違う主な費用:搬送料・安置料
1. 自宅
住み慣れた家で、家族がそばにいられるのが良いところです。費用は搬送料とドライアイス代が中心で、安置料はかかりません。
注意点は次のとおりです。
- 布団を敷く部屋が必要です。ご遺体を傷めないよう、エアコンで部屋を涼しく保ちます。
- マンションでは、ストレッチャーがエレベーターに入るか、通路を通れるかを確認します。
- 弔問の人が来やすくなるため、落ち着いて休めないこともあります。
- ドライアイスは、葬儀社に交換に来てもらうのが一般的です。交換の回数と料金を聞いておきましょう。
2. 葬儀社の安置室
家に連れて帰れないときに、よく使われる選択肢です。搬送を頼んだ葬儀社の安置室にそのまま預けることが多くなります。
- 1日あたりの安置料と、何日分になりそうかを確認します。
- 面会できる時間や、付き添いができるかは、施設によって違います。
- 搬送と安置を同じ葬儀社に頼んでも、葬儀まで頼んだことにはなりません。葬儀を別の葬儀社に頼む場合の費用も、先に聞いておきましょう。
3. 民間の遺体安置施設・公営斎場の安置室
葬儀社とは別に、ご遺体を預かることを専門にした民間施設もあります。葬儀社を決める前に預けられる施設もあるので、「まず安置だけ」をしたいときの選択肢になります。
公営の斎場に安置室がある地域もあります。ただし条件があることも多く、たとえば大阪府高槻市の市営葬儀式場の霊安室は、その式場で葬儀をする人だけが使え、24時間ごとに3,140円・最長48時間で、付き添いや宿泊はできないと案内されています。お住まいの自治体の条件を確認してください。
夜中に亡くなったとき
夜中や明け方に亡くなることも少なくありません。慌てずに、次の順で考えます。
- 霊安室にいられる時間を聞く:夜間の扱いは病院によって違うので、まず確認します。
- 安置先を決める:自宅に帰れるか、預ける場所が必要かを家族で決めます。
- 搬送を頼む:24時間電話を受け付けている葬儀社は多くあります。病院で紹介された業者に頼んでもかまいません。深夜の割増料金があるかは必ず聞きます。
夜中は家族も疲れていて、判断が鈍りがちです。電話でのやりとりは、聞いた料金をメモしておくだけでも、後で役に立ちます。紹介された業者に搬送だけ頼むときの聞き方は「病院紹介の葬儀社に『搬送だけ』頼む方法」にまとめています。
「時間がないから葬儀社も今決めないと」は誤解
霊安室を早く出なければならないとき、「それなら葬儀社も今すぐ決めないと」と感じる人は多いはずです。でも、急いで決める必要があるのは、
- どこへ運ぶか(安置先)
- 誰に運んでもらうか(搬送業者)
この2つだけです。葬儀社をどこにするか、どんな葬儀にするかは、安置が済んでからで間に合います。
法律(墓地、埋葬等に関する法律 第3条)では、火葬は原則として亡くなってから24時間を過ぎないとできません。実際には火葬場の予約もあり、葬儀は翌日以降になることがほとんどです。安置したあとで、2〜3社に電話して料金を聞くことは十分にできます。
2005年の公正取引委員会の調査報告では、一部の病院指定業者が遺族を霊安室に引き留めて説得し、自社との契約を促す事例があったと指摘されています。霊安室での時間の短さが、葬儀の契約を急がせる理由にされてしまうことがあるのです。
国民生活センターに寄せられた相談には、病院からご遺体の引き取りをせかされて葬儀社に頼み、翌日に思っていたより大幅に高い見積もりを出されたものの、「もう引き取ってもらったから」と思い直して契約した例があります。搬送してもらったあとでも、葬儀の契約前なら葬儀社は変えられます。くわしくは「搬送してもらった後でも、葬儀社は変えられる」をご覧ください。
落ち着いているうちに、1つだけ決めておく
霊安室で慌てないためにいちばん役立つのは、安置先と、連絡する葬儀社の候補を1つ決めておくことです。入院中や介護中で、心の準備ができる時間があるなら、資料を取り寄せておくだけでも違います。
病院で亡くなってからの動き方は「病院で家族が亡くなったら:最初の数時間の手順」にまとめています。スマホで開けるようにしておくと安心です。
参考資料・出典