病院紹介の葬儀社に「搬送だけ」頼む方法|電話で聞く4つの質問と、料金の目安
病院で紹介された葬儀社には、ご遺体の搬送だけを頼むことができます。頼む前に聞いておきたい4つの質問と、搬送料の目安、霊柩運送の料金のしくみをまとめました。
「搬送だけ」は頼んでいい
病院で家族が亡くなると、ご遺体は霊安室に移され、そこから自宅や安置施設へ運ぶ必要があります。このとき、病院から葬儀社を紹介されることがあります。
紹介された葬儀社に頼むのは、搬送だけでかまいません。搬送と葬儀は、別々に頼めるものです。
病院の側でも、搬送と葬儀を切り分ける動きがあります。たとえば京都市立病院が、病理解剖をしたご遺体の搬送などを業者に任せるときの仕様書(令和8年度)には、次のような決まりがあります。
- 遺族がほかの業者に搬送を頼んだ場合は、霊安室でその業者に引き渡す
- 業務が終わるまで、遺族に葬儀の勧誘をしてはならない
- 決められた料金のほかに、心付けなどを受け取ってはならない
また国立病院機構埼玉病院は2023年に、霊安室の業務を担う業者を公募・登録制にし、遺族に請求する搬送料などの見積書を出すよう求めています。
これらは一部の病院の例で、すべての病院が同じではありません。それでも、「搬送を頼んだ業者に葬儀も頼むもの」とは限らないことがわかります。
その場での言い方や、サインの前に確かめることは「病院で『葬儀社はお決まりですか?』と聞かれたら」にも詳しくまとめています。
頼む前に聞く4つの質問
電話でも、霊安室で担当者と向き合ったときでも、聞くことは同じです。メモを取りながら聞くか、家族の誰かに横で書いてもらいましょう。
- 01搬送だけ頼めますか最初にはっきり伝える
- 02総額はいくらですか距離・深夜料金・ドライアイスを含めて
- 03どこに安置しますか安置料は1日いくらか、面会できるか
- 04葬儀を頼まなかったら?搬送料などのほかに請求があるか
答えは書面かメモで残してもらいます。
1. 搬送だけお願いできますか
最初にはっきり伝えます。「搬送だけ」と言っておくと、その後の話が葬儀の契約に進みにくくなります。
2. 料金はいくらですか(総額と内訳)
「搬送料」とひとことで言っても、中身はいくつかに分かれます。総額と、次の内訳を聞いてください。
- 距離:基本料に何kmまで含まれ、それを超えるといくらか
- 時間帯:深夜や早朝の割増があるか
- ドライアイス:1回いくらか、何日分が含まれるか
- その他:ストレッチャーの人員追加、待機料など、ほかにかかるものはあるか
3. どこに安置しますか。安置料はいくらですか
自宅に帰るのか、葬儀社の安置室に預けるのかで、かかる費用が変わります。預ける場合は、1日あたりの安置料と、面会できるかも聞いておきましょう。安置先の選び方は「病院の霊安室には何時間いられる?」で詳しく紹介しています。
4. 葬儀を頼まなかった場合、何か請求されますか
ここがいちばん大事です。搬送のあとで別の葬儀社に決めたとき、搬送料・ドライアイス代・安置料のほかに請求があるかを聞きます。
答えは、書面かメモで残してもらうのが安全です。口頭の約束だけだと、あとで「言った・言わない」になりかねません。
搬送料の目安:公的な相場はない
先にお伝えしておくと、搬送料について国や公的機関がまとめた相場のデータはありません。地域、距離、時間帯、車の種類で変わります。
そのうえで、ひとつの目安として、1級葬祭ディレクターの赤城啓昭氏は、2026年9月のマネーポストWEBの記事で、よほどの長距離でなければ5万円前後なら適切だとしています。同じ記事では、正式に依頼する前に「搬送だけお願いしたいが、いくらか」と聞く方法も紹介されています。
これはあくまで専門家ひとりの目安です。安い・高いを決めつけるためではなく、大きく外れていないかを確かめる物差しとして使ってください。
反対に、目安から大きく離れた金額を示された例もあります。国民生活センターが2026年に公表した相談事例では、施設で亡くなった母親を葬儀場まで搬送してもらった人が、翌日に高いプランを勧められ、キャンセルするなら搬送費用として20万円を請求すると言われています。しかも、広告には「依頼しなければ搬送費はいただかない」という趣旨が書かれていました。
だからこそ、4つ目の質問の答えを先に聞いて、形に残しておくことが大切です。
霊柩運送の運賃は「届出制」
霊柩車や寝台車でご遺体を運ぶ仕事は、貨物自動車運送事業法にもとづく運送事業です。国の許可や届出がなければ、お金をもらってご遺体を運ぶことはできません。
霊柩運送を含む貨物の運送事業者は、運賃や料金を決めたり変えたりしたときは、30日以内に地方運輸局長に届け出ることになっています(貨物自動車運送事業報告規則 第2条の2)。先ほどの京都市立病院の仕様書でも、市内の搬送料はこの規則にもとづいて届け出た運賃で請求するよう定めています。
ここから言えることは2つです。
- 運送の料金は、事業者ごとに決まった料金表があるはずです。「料金表を見せていただけますか」と頼んでかまいません。
- 届出制は、国が金額の高い安いを決めるしくみではありません。事業者によって料金は違います。
また、ドライアイスや安置は運送とは別のサービスです。搬送料とは別に料金がかかるのが一般的なので、2つ目の質問で必ず内訳を確認してください。
自分で探した葬儀社に、搬送から頼む選択肢もある
病院で紹介された業者に頼まなければならない、という決まりもありません。自分で探した葬儀社に、最初の搬送から頼むこともできます。
候補が1社でもあれば、次の順で進めます。
- 病院の看護師や事務の方に「搬送は自分で葬儀社に頼みます」と伝える
- 葬儀社に電話し、病院名・病棟・亡くなった方の名前・安置先の希望を伝える
- 到着までの時間と、搬送料の総額を聞く
- 病院に、葬儀社が着く予定の時刻を伝える
このときも、上の4つの質問はそのまま使えます。電話で搬送をお願いしても、そのまま葬儀を契約したことにはなりません。料金を聞いたうえで、葬儀を頼むかどうかは安置のあとで決めればよいのです。
搬送のあとで、葬儀社を考え直してもいい
法律(墓地、埋葬等に関する法律 第3条)で、火葬は原則として亡くなってから24時間を過ぎないとできません。安置が済めば、葬儀社を比べる時間はあります。
搬送を頼んだ葬儀社に、そのまま葬儀もお願いしてもかまいません。説明が丁寧で、料金も納得できるなら、それは良い出会いです。大事なのは、比べたうえで自分たちで決めることです。
搬送してもらったあとで別の葬儀社に変えたくなったときの断り方や、支払う費用の考え方は「搬送してもらった後でも、葬儀社は変えられる」にまとめています。病院での手順全体は「病院で家族が亡くなったら:最初の数時間の手順」で確認できます。
参考資料・出典